私と愛犬と写真の物語
~写真は、未来の私を支える「光」~
愛犬との出逢いからはじまった写真三昧の日々。彼らと撮った写真が私の今を支えてくれています。
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2007年の春、ペットショップのプレイルームで他の子犬たちを遠目に眺めながら、ぽつんと座っていた一匹のパピヨン。その姿に、私はなぜか自分自身を重ねて見ていました。
「抱っこしてもいいですか?」
店員さんから手渡された瞬間、私はこの子を迎えることを決めていました。
自分でも驚くスピードで、その日のうちに連れ帰り、「まる」と名付けた小さなパピヨンは、まるで以前から我が家の一員だったかのように馴染み、私をじっと見上げてくれました。
その視線は「母ちゃん」に向けるそれそのもの。
こうして私は、その時から「母ちゃん」になったのでした。
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それから数ヶ月後、弟分の「けんた」が家族に加わります。
おっとり繊細なまると、明るくて天真爛漫なけんた。
正反対のようなふたりは不思議とバランスが良く、毎日がにぎやかで愛おしい日々になっていきました。
会社が終わればすぐに家に帰る。フィルムの一眼レフはデジタル一眼へと変わり、来る日も来る日も、まるとけんたの姿を撮り、親ばかブログに載せてはにやける日々。
気づけば、写真は私にとって「暮らしの一部」になっていました。
やがて仲良くなったパピヨン仲間たちとの交流の中で、写真熱はさらに高まっていきます。
お散歩、ドッグラン、カフェでのおしゃべりにわんこを連れての旅行。
そのたびに、カメラを持って、わんこや楽しい時間を記録に残す日々でした。
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ある日、写真が上手なわんこ友だちが、「家族写真を撮りたい」と、私とまる&けんたの写真を撮ってくれました。その写真を見てふと気が付いたこと。

Photo by Shiori Tsukiji
「私、幸せそうな顔してる」
わんことそのパパやママの写真を撮っては来たけれど、自分の表情が柔らかく、幸せそうなことに気が付いたのは、たぶん、これが初めてでした。
この時以降、私が撮る写真には、さらに「家族」という視点が加わっていきます。
ただわんこを可愛く撮るだけでなく、一緒に居る喜びが宿るような写真を撮りたい。その輝きを、切り取って届けたい。とても自然に、そんな気持ちになったのです。
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やがて時が過ぎ、ある日、まるがその長い犬生を終えて、お空へ還っていきました。
大切な友人と出会わせてくれ、心を込めて写真を撮ることを教えてくれたまる。
旅立ちに持たせたのは、まるが好きだったおもちゃ、ごはん、お手紙
― そして家族で撮った写真。
「いつまでも、家族だよ」
でも―
まるがいない現実を、私はなかなか受け止めることができませんでした。
「まるとの生活は夢だったのでは・・・」
そんなふうに、まるが存在したことすら疑ってしまうほど、その哀しみは深かったのです。
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そんな私を現実へと連れ戻し、そっと支えてくれたのは、
けんたの存在、それから、まるとけんたと私が一緒に写った写真でした。
写真から伝わる、抱っこしたその重さやぬくもり、柔らかな被毛の感触、そして、そこに在る、自分の笑顔。
「私は、確かにこの子と一緒にいた」
ただただ愛しくて幸せな記憶。
不安定になるたびに、写真を見て、その記憶を手繰り寄せる。
そうして、少しずつ、私はまるがいない現実を受け止め、
一緒に過ごした幸せな時間に感謝し、今を過ごせるようになったのです。
~「未来のあなたへ」届けたい一枚~
大切な愛犬や大切な誰かと過ごすかけがえのない時間。
その一瞬の中に写るのは、幸せなあなた。
きっとその写真は、未来のあなたにとって、
宝物のような記憶であり、自分を励ます「未来のチカラ」になる。
そう信じています。
その時々の輝く時間を写真に残し、誰かの未来にそっと届けたい。
そんな想いを込めてシャッターを切ることができること。
― それが私の大きな幸せのひとつです。

Photo by Shiori Tsukiji